希望を抱いて

震災から10日が経ちました。
たくさんの方が亡くなられ、今も多くの方が避難生活を余儀なくされています。
映像を目にし、情報を知る度に、痛切な思いに駆られます。
原発はまだ、予断を許さない状況ですが、それでも少しずつ、復興の兆しも見えてきました。


僕は震災後、ツイッターを通じて、被災者の皆さんに次のように語りかけました。


「被災された方へ。自分の人生を、眩しいほどのハッピーエンドが待ち構えている一篇の長篇小説だと考えてみて下さい。あなたの人生の物語はまだ途中のページです。残りのページでは、数多くの登場人物が、主人公であるあなたを助けてくれます。そうして立ち直っていく主人公は、最高に美しい人間です。」


この気持ちは、今も変わりません。
自衛隊やボランティアなど、既に多くの方達が、続々と皆さんの人生に登場しています。
まだまだ先は長いですが、物語は一歩一歩、前に進んでいます。
大切な方を亡くされた悲しみは、簡単に癒えるものではありませんが、そういう時には、自分の人生のページを捲る手を止めて、その方のことをゆっくり思ってください。時には、ページを後戻りして、その方との思い出に浸って下さい。そうして気持ちが落ち着いてきた時には、また自分のペースで、少しずつ、人生のページを捲っていって下さい。その物語の主人公は、皆さん自身です。そしてそれは、本当に愛されるべき、感動的な主人公です。


僕個人の出来ることは、情けないほどに微力で、今のところ寄付くらいでしかお役に立てていませんが、何が出来るのかを引き続き考えていきたいと思います。


小説家としても、今回の出来事を作品を通じて受け止められないのであれば、僕がこの時代に小説を書き続ける意味はありません。僕の小説が、一体どれだけの人にとって意味があるのかと、悲観的な気持ちにもなりますが、人間について、社会について、この経験を踏まえて、改めて考え直すというのは、むしろ小説家として、最低限やるべきことです。
『かたちだけの愛』の取材では、実際に義足で生活されている方にもお話を伺いましたが、人生の大きな試練を、前向きに、明るく乗り越えてゆこうとされているその姿に、深い感動を覚えました。そして、そうした方たちの願いが、何も特別ではない「普通の生活」であることも教わりました。それはもちろん、障害を持った方だけではなく、心に傷を負ったすべての人に言えることです。
普通の生活に戻り、普通に人と笑い合い、おいしいものを食べ、仕事に邁進し、趣味にいそしんだり、恋をしたりする。普通である、ということは、こんなにも素晴らしいことかと、今は多くの人が感じていると思います。そして、改めて戻ってきた普通の生活は、前よりももっと良くなっているべきです。
僕たちは、被災者を優しい気持ちで思いやり、一日も早く、「普通に」一緒の生活が出来るように、復興に協力しなければなりません。
もちろんこれは、被災地だけの問題ではなく、日本全体の問題でもあります。原発を始め、今回の震災で改めて浮き彫りになった問題も数多くあります。日本全体が、復興を通じて、元に戻るだけではなく、前に進まなければなりません。「前進的復興」というのが、今後の課題です。


もう一つ、これも丁度一週間前に、ツイッターで発信したメッセージです。


「日本は今、大怪我をしているが、救急処置が終われば、回復への長いリハビリが始まる。動かせる部分が元気で、しっかり動かないと、それもままならない。寄付や情報の共有、言葉による激励などを通じて、被災者に寄り沿いながら、同時に、震災前にも増して活発に活動しよう。そういう一週間の始まり。」


節電など、気をつけなければならないことは色々とありますが、活動できることの喜びを噛みしめながらがんばりましょう。


ブログの更新は遅くなりましたが、震災直後から、この間、ツイッターではかなりたくさんツイートしました。
僕自身の言葉だけでなく、どこで今、食料が足りずに孤立している人たちがいるとか、放射能についての専門家の解説とか、あるいは、人を元気にさせるような言葉だとか、次々と舞い込んできて、それをまた人に伝えたりしました。
僕がツイッターを始めたのは、一年ちょっと前ですが、今回、マスコミの情報だけを受け取っていたのと、ツイッターを通じて情報を知り、こちらからも発信できていた、というのでは、随分と違っていました。
僕自身の安否も、ツイートによって、関係者にはすぐに伝わりました。


こちらから、僕のツイートやリツイートをご覧いただけます。
古い緊急情報は、既に解決しているものも多いですので、気をつけて、記録として読んで下さい。

https://twitter.com/hiranok


ツイッターの使い方、見方は、検索すると色々出てきます。
例えば、こんな感じです。http://d.hatena.ne.jp/rikuo/20100525


今回の震災では、東大の早野教授のツイート https://twitter.com/hayano それから、東大病院放射線治療チームのツイート https://twitter.com/team_nakagawa が、専門家の見地から、刻々と変化する原発の状況、その健康への被害について、的確な解説を提供してくれ、多くの人が過度の不安から解放されました。
未読の方は、さかのぼって読んでみられることをおすすめします。


連休中ではありますが、また新しい一週間が始まりました。
希望を抱いて、前向きに歩んでいきましょう!