「Golden Gould」

今年は、グレン・グールド没後25周年という、キリが良いんだか悪いんだか微妙な年なんですが、それにあわせて、ソニー・クラシカルからは80枚組(!)のボックスが発売予定だったりと、色々な企画があって、その一環として、僕も「Golden Gould」という、大層なタイトルの二枚組ピアノ選集を10月に出すことになっています。

詳細はまたお知らせしますが、最初の「ゴールドベルク」+バッハ何曲かが1枚目、モーツァルト、ベートーベンのソナタ、ロマン派の小品数曲、スクリャービン、ベルクのソナタが2枚目と、結構、網羅的な内容になってまして、お得ではないかと。
セコイので、収録時間いっぱいに、詰められるだけ、詰め込んであります(笑)。これからグールドを聴いてみようという人には最適だと思いますし、ファンの人にも、ipod用とか、カーステ用とか、「身軽なグールド」としてエンジョイしてもらえればうれしいですね。

昨日、今日と、ソニーのスタジオでマスタリングに立ち会ってきました。
難しいなと思ったのは、ノイズの問題です。
収録作は当然、曲と演奏とで選ぶんですが、年代によって録音環境が大きく違うので、続けて聴くと、そのコンディションの落差が結構、気になります。

インヴェンションとシンフォニア」は、スタジオで聴くと、自宅のオーディオで聴いていたとき以上に、ブォ〜ッという低音のノイズが気になって、どうしたもんかという感じでした。エンジニアさんによれば、録音スタジオの空調の音らしいのですが。
グールドは、ご存じの通り、レコードというメディアの可能性をいち早く、最大限に評価した人で、64年以降は、コンサート活動を完全に止めてしまっています。
それを考えると、資料的な意味では、ノイズごと収録した方が、演奏家としてのグールドの変遷だけでなく、あわせて、記録メディアの発展の歴史も実感できて、興味深いかなと思ったのですが、まぁ、大半の人は、そういうことよりも、音楽としてlistenableなものの方がいいだろうと、「インヴェンション〜」に限り、多少、ローをカットして調整しました。ただ、やりすぎると、今度は演奏自体までペラペラになってしまいますので、気持ち程度ですが。

グールドの鼻歌の方は、もう、どうしようもないですね。どうかしようとも思いませんでしたが。
グールドは本当に天才だと思いますし、今回つくづくそのことを再認識したんですが、あの鼻歌は、個人的にはいただけないです。
彼は、右手が旋律、左手が伴奏、というように、ピアノでホモフォニックな作曲をするロマン派の音楽家たちをかなり辛辣に批判しますけど、あなたのその鼻歌はいいんですか、とちょっとツッコミを入れたくもなりますが(笑)。
まぁ、それもまたチャーミングじゃない、ということなんですかね。。。
ともあれ、ライナー・ノーツも書きましたので、ご興味のある方は、是非、手に取ってみてください!