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新作『ドーン』は、7月9日発売です!


『決壊』に続く、新作長篇小説のタイトルは、ズバリ、『ドーン』です!
出し惜しんでましたが、どうでしょう、もう覚えました(笑)? 『ドーン』です。ピンと来た人もいると思いますが。
講談社の「書き下ろし100冊」シリーズのひとつとして刊行されます。


舞台は、2036年頃の近未来です。……というと、SFのようですが、あまりそういうつもりでは書きませんでした。
僕は、中世末期(『日蝕』)から近代(『葬送』)を経て、現代(『決壊』)と、時代の節目節目を舞台にこれまで小説を書いてきましたが、未来の世界も、言ってみればその延長上です。
テクノロジーがものすごく進歩していて、人間の考え方も随分と変わっています。現代を知るには、過去と比較してみるのが一番分かりやすいですが、想像された未来を通じて今の世界をかえりみるというのもアリだと思います。世界観や人間観に僕なりのアイディアを色々と盛り込みました。
そして、今回は、二巻本ではなく、一巻に収まってます。ご安心を。


内容をちらっとご紹介すると、……
人類初の有人火星探査に成功した六人のクルーの中に、日本人が一人います。
主人公は彼です。彼は、2年半のミッションの間に、ひとつの秘密を抱えて戻ってくるのですが、それがアメリカの大統領選の最中に大問題となります。あれやこれやの人物や事件が複雑に絡んでいく中で、彼の日本での非常に個人的な哀しみの記憶が折り重なってゆきます。


物語としては、僕のこれまでのどの小説よりもエンターテインメントの要素が強く表に出ていますが、根底にあるのは、これからの世界を、一体、どうやって生きていったらいいのかという、『決壊』後に僕として考えなければならなかった問題です。


今出ている『中央公論』で、亀山郁夫さんとドストエフスキーについての対談をしていて、その中でも言ったことですが、結局、ドストエフスキーの小説は、『カラマーゾフ』にせよ、『罪と罰』にせよ、『悪霊』にせよ、悪だとか、罪だとかいう以前に、「信じるか、信じないか」の二者択一の世界です。信じないとすれば、ニヒリズム。信じるとすれば、何をどう、あるいは誰をどう、信じられるのか。……


『決壊』で僕は、今の時代の困難を、システムの側と人間の側との双方から考えましたが、その時にやっぱり浮かび上がってきたのが、ニヒリズムの問題でした。何のために生きているのか。どうして人を殺してはならないのか。どうすれば愛を信じられるのか。……


中途半端に問題を捉えて、なんとなくの「癒し」でそれをごまかしても何の気休めにもならないというのが僕の考えで、苦しみながら問題を直視し(『決壊』)、そこからでは、具体的にどういう生き方が可能なのかを探る(『ドーン』)という、ワンセットのつもりで書きました。『決壊』は、暗闇へと降りていく作品ですが、『ドーン』は光が射し込む出口へと向かう作品です。
小説家としての落とし前というより、今を生きているひとりの人間として、どうしても書かなければならなかった小説だと思っています。書きたかった小説、というのかな。


まあ、あんまりそういうふうに書くと、深刻になりすぎますが、書き手の課題としては、今回は、徹底してシリアスに考え抜いたことを、ページを捲る手を止められないくらい、面白い物語の中で読者に体感してもらう、というもので、いつも以上に、クライマックスに向けて加速していって、盛り上がっていくはず(!)です。


7月に入る頃には、みなさんそろそろ、『1Q84』も読み終わっているでしょうから(笑)、この夏の読書は『ドーン』ということで、ひとつよろしくお願いします!


アマゾン等のネット書店でも、もうじき予約ができるようになるはずです。
もちろん、リアル書店では、既に受けつけてもらえます!
追ってまた、サイン会情報等、ご連絡します。