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新作長篇『決壊』、「新潮」にて連載開始!&『高瀬川』(講談社文庫)10月13日発売!

今年に入ってからずっと取り組んでいた新作長篇『決壊』が、いよいよ、今月発売号(11月号)から連載開始されます。
かなり長いものになりそうですが、僕としては、これを自分の第三期の最初の作品だと考えています。
長篇の連載は初めてですが、ともかくも、第一回目の原稿を仕上げて、一応の目処がつきました。長丁場になりそうですが、ひとつ、ご期待ください。


それから、『高瀬川』が、文庫化されます。
これは、僕の第二期の最初の本で、そういう意味では、新連載と同じタイミングというのも、ちょっと感慨深いです。
四つの短篇からなるこの作品集は、『一月物語』と並んで、僕の本の中でも、一番、女性読者からの反応が良かったものです。作者としては、ちょっと意外でしたけど。


表題作の「高瀬川」に描かれた一夜の物語は、今時の最も「ありふれた」男女の交わりの風景だと思いますが、僕はそれを出来るだけ、丁寧に扱いたいと思っていました。
恋愛小説でも、恋愛映画でも、どんなにきめ細かく二人の心の交流が描かれていても、体を重ねる場面になると、途端に粗雑になってしまうんですね。ひたすらロマンチックに描いたり、さらっと仄めかす程度で流したり、官能的な描写でごまかしてしまったり。だけど、やっぱり、お互いに恥ずかしいような場面だからこそ、相手に対するデリケートな気づかいとか、ささやかな笑いとか、そういう微妙なコミュニケーションがあるんですね。そういうところを書きたかったというのが、僕の意図です。その反転したものが、先頃出版した『顔のない裸体たち』で、これはこれで今時の「性」を通じた男女のコミュニケーションのあり方だと思っていますが。そのどちらが正しいということではなくて、どちらもが隣り合うようにして併存しているのが現代という時代なんでしょう。

この二作に限らず、第二期の短篇集はどれもそんな風に、一作ごとに完結しているわけではなく、作品間の響き合いを狙って書かれています。行間を読む、とはよく言いますが、その意味では、作品間を読んでもらいたい、という感じですかね。


……と、まあ、作者は色々と能書きを言うものです。
そんなことは気にせずに、どうぞ、気楽にお楽しみください。